2/10
前へ
/44ページ
次へ
「……なんで家に?」  時計を見ると、既に17時を回っていた。どんだけ寝てたんだ、俺は。 「襲いに来た」 「あれ? あなたそんな肉食系でしたっけ?」 「キミ相手に遠回しは意味がないだろう?」  慎みは持て。 「それでーー」  ドスンと、布団越しに俺の上に股がって、ズイッと顔を近づけてくるタヌキ先輩。 「そろそろいただいてもいいかな?」  ペタリと俺の頬に手を当ててくる。ひんやりとして気持ちいい手が更に俺の体温を上げにきた。 「ーーーー」  もうすでに、吐息が感じられるくらいの距離に近付かれて、俺は思考停止しかけた。  ーーそれを押し止めたのは、タヌキ先輩の吸い込まれるような瞳と、表情を見たからだ。 「ーー先輩」  俺は頬に置かれた手を取りーー 「ーー弱ったところに付け入ろうとするなんて、らしくないっすよ」 「…………」  急速に冷えた自分の思考と感情に従い出した返答は、口付けをしそうだったタヌキ先輩の動きを止めた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加