3/10
前へ
/44ページ
次へ
「ーーバレたか」  悪びれもせずに身を引くタヌキ先輩。あっさり引いたところから、隠す気はなかったようだ。 「どこで気が付いた?」 「ーー直前まで気が付きませんでした」  冷静に考えれば、常のタヌキ先輩らしくないーーいや、もう常も理解してるか怪しかったけどさ。 「ほとんど勘ですよ。ーーなんで切羽詰まったような表情してんだろうって」  いつもの感情が読みにくい表情の筈なのに、どこか悲壮感が滲み出るような違和感を覚えたのだ。だから、カマをかけた。 「なるほど、表情に出ていたか」  納得したように嘆息をついたタヌキ先輩だが、どうやら上から降りる気は無いようだ。 「キツネ先輩に聞いたんですか?」 「うむ、あらましは聞いた」  体調が戻りきっておらず、力付くで剥がせない俺は、仕方がないのでこのまま会話を続ける事にする。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加