匿名

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匿名

 世の中には自分より優れていて、自分より異性からモテて、自分よりちゃんとしていて、自分よりも稼いでいて、自分よりも人とのつながりが多くて、自分よりも人気がある――そんな存在がたくさんいる。  数えきれないほどに。途方もなく。  そういう人たちを見ていると、どうしようもなく自分がゴミみたいな人間に思えてくる。  凡才で、異性との縁なんかなく、だらしなくて、収入はそこそこで、まあ友達が数人いるくらいの、自分なんか、ゴミみたいに思える、そんな奴らがごまんといる。  ほんっとうに腹立たしい。  なんで、こいつはこんなに輝いているんだ。  なんで、こいつはこんなに美しいんだ。  なんで、こいつはこんなに眩しいんだ。  なんで、なんでなんでなんでなんでなんで――  俺じゃないんだ。  どうしようもなくイライラして、妬ましくて、羨ましくて――  今日もまた、匿名で声を上げた。
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