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あか
ごうごうと響く音に目を覚ますと、そこは一面の銀世界だった。
目の前は吹雪に閉ざされ、白く奥行きのある壁に囲まれている。
(ここは…)
先ほどまで自分はどこにいたのかを思い出していると、白い壁にふわっと灰色の影が浮かび上がった。
それは少したどたどしい足取りで、近づいてくる。
「…あの」
声をかけてみる。
が、反応はない。
吹雪で声が聞こえなかったのかもと思い、もう一度声を張り上げて問いかける。
「あの!」
人影は、ハッとしたように顔を上げた。
近づいてくる。
深い雪をかき分けて、徐々に徐々に近づいてくる。
瞳はうつろだった。
音だけを聞いてやってきたかのような、無の表情。
しかしその手には、熱を帯び、ことばを帯びたナイフがあった。
「!?」
ぎょっとして身構えると、人影は無の瞳でこちらを見つめ――
異様に切れ味の鋭いそのナイフで、腕ごと首をかっさらった。
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