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気づいたら空は真っ白になっていた。
空は雲に包まれ、当たりは一層薄暗い雰囲気が漂う。電線と電線で繋がっている電柱は坂に沿って傾いている。
人が集まる横断歩道だ。
一刻と早くここから逃げ出したかった。
なんとかして道端に咲くアカバナユウゲショウを見つめて気を紛らわそうとした。リンは相変わらず不思議そうに他の人の鞄についてるストラップをひとつずつ目を通していた。
生徒たちの談笑の声は全く耳になかった。
ようやく信号が青になってほっとしていると、後ろからぞっとするような冷気が迫ってきた―あいつだ。
一瞬にして、あいつは僕たちの傍をいかにもみせ付けてるかのようにわざとらしく通り過ぎた。
見せたがりなのか、目立ちたがりなのか、それともリンの興味を引き付けたがっているのかは不可解だった。ただ彼が傍を通り過ぎるといつもゾワッとなっていた。
あいつはいつもと変わらなかった。
鞄をザックのように背負っては、イヤホンを耳にして牛乳を飲んでいて、マフラはほぼ取れかけていた。でもその方がよかった。
因みにあいつとゆうのは僕と喧嘩した友達であった人だ。君はまず知らないだろう。
実はその頃からもうかなり心の距離が離れていて、細い糸が切れるか切れないかぐらいお互い本心と自尊の合間にいた。
リンは見事に興味を惹かれた。
「今日珍しくいたね」
なんて、嬉しそうに反応している。
「よかったじゃん」
あえて冷たく答えた。
「嬉しくならないの?」
僕は君とは違って、彼と気まずい状況にあるんだよ、会えても素直に喜べないさ。
「嬉しいよ、だから?」
さらに冷たく答えた。
「もういい加減にしてよ!いつまでもそうしているから仲直りができてないんだもん。彼も彼だけど、零も零でしょ?」
少し怒っていた。
彼女に反論したかったが、僕が全て悪いという事実は間違っていないため、出来なかった。
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