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事実、人間は常に孤独である。
友達や恋人や家族がいたとしても、その人たちはやがて散りゆき、自分を理解し、愛し、守り抜けられるのは、結局の所、自分しかいない。
例え同じ辛い体験をしたとしても、その傷の深さは違うものであり、自分の心がどれほど薄いガラスで作られてるか理解できるのも、自身だけである。
だからその頃は例え誰が僕に同情しても、疑問持っても、軽蔑しても、僕は心底なんとも思わなかった。
「もし、最初から都合のいい表面上の友達が出来ていれば、少なくとも魔物に怯えてはいなかったのだろう」
そんな事を考えながら僕は電車を降りた。
僕は中学生まで何度も転校をしてきた。表面上の友達でさえ、出来やしなかった。
魔物のいるダンジョンに放り出され、道に彷徨い歩いて、戦意を失ってからは、気づいたら逃避をしていた。妄想ばかりしても、なんの違和感を感じなく、かえって安心感を得た。
その時からだった、僕が魔物から逃げ出し始めたのは。
人混みに交えて僕は階段を駆け上がった。
耳障りな音を聞き、顔見知りのない人々の疲れきった無感情な顔、そしてそれらの奥に潜むあらゆる利己的な感情を自分と照らし合わせ、魔物の存在を極力避けながらため息を着き改札を出た。
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