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第2章【逃避】
今日は一段と空が曇りで薄暗い青色となっていた。そして一段と僕の心の状態を表している。
顔に突き刺さる風を押し通し、空を見上げながら感情を消していった。
僕は坂を登り始めた。
時に自分はタイムスリップしてるかのように感じたことがただある。
用意された世界の中で溶け込み、みんなと同じように過ごすが、存在は否定され、例え認められたとしてもそれは表面上に過ぎないことだった。初めから自分の存在はなかったと言ってもおかしくないぐらいに。
魔物に心がぎゅっと掴まれてるのが分かる。
「また例の不安だ」
と思い、当然のごとく現実逃避を始める。
これが僕の日常であり、当たり前のようでもある。
弱くて脆い勇者には、あらゆる手で逃げ切ることしかできない。立ち向かう方法を知っていても、臆病者であるがため、なにもできない。僕はずっと幻想と現実の境を彷徨い続けいた。そして今もそう。
人は常に彷徨っている。
目標が無かろうが常に一時的な幸せを求め続けいている。
童話に出てくるような幸せを信じたことがない。必ずその幸せはどこかで終わるものだと確信している。それはどのような形であれ、どんな最後であれ、何れ結果的に終わるには変わりない。
だから正直なところ、人生がどうなるかどうかどうでもいいと感じる自分もいた。
それでもここまで生きているのはただ、自ら命を天に託すほどの勇気さえない弱い人間であったからだった。自分には口実となる「生きがい」があったから、頑張って来れた。
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