第2章【逃避】

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「昔はもっと、精神的に強かったのになぁ」 と、坂を登りながら過去に懐かしくなっていると、突如後ろから聞き慣れた声が耳を貫いた。 「おはよ!零、また考え事?」 反射的に声の向く方法を見る。 僕の幼馴染だ。明るそうにこちらを見ている。 「おはよ、リン、僕はいつも意味の無い考え事をしているよ」 彼女をチラリと見た。 「そんな暗いことばっか考えだって、答えは出ないよ」 彼女は自分の髪を結び直し始める。 「他になにも考えられないよ、明るいことを考えようとすると、かえって僕は苦しくなるの、君も知ってるでしょ」 顔が少しムスッとしている様子だった。 「いつも悪い方に考えようとするから、明るいことを考えても、苦しくなるんだよ?」 僕を救おうとしてくれるのはとても有難かった。 僕は常に悲観的であったに対し、彼女は楽観的だった。どちらかというと、人間の本質については考えないような、純粋な子である。それだからか、騙されやすい子でもあった。でもそうだからといって、本当に騙されたことは無い。 彼女には人間不信なところがあった。 彼女が僕と同じというわけではないが、人間に対し普通より1倍疑心暗鬼な時が多い。ただそれでオカシイとならないのは、実に羨ましいことだ。 「じゃあ考えないようにするよ」 哀傷じみた笑顔で答えたが、それでも笑顔で返事しただけあって彼女は一気に明るくなった。 「そう来なくっちゃ!笑顔でいる方がずっといいよ」 とても嬉しそう。 相変わらず陽気な人だ。 僕ももう少し、彼女みたいになりたかった。
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