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第3章【放棄】
彼女と歩きながら、見慣れた光景に目を通していった。
全体的に薄暗い雰囲気で、誰もいない廃墟にいる気分だった。きちんと整列された一軒家はとこか不思議な感じがする。
コンビニから知らない若い女性が出て来て、彼女は興味津々にその若い女性を見つめていた。
何を見ていたのだろうか。
「ちょっと、ちゃんと前見て歩いてよ」
若い女性に気を取られている隙に電柱が身に迫ってるのを彼女は気づかず、危うくぶつかるところだった。
「ごめんっ、見てなかった!」
細くて綺麗な手を口に当てた。
「君の方こそ何考えてたの、ちゃんと気をつけないとケガしちゃうよ?」
僕は彼女の世話係のような役割だった。
彼女はドジで、忘れ物もよくする。言った言葉はすぐに忘れるし、初めて行く場所では迷子になる。ほっといては危険を犯すことだって有り得る。
彼女に決して恋愛感情は持っていない。
僕はそんな趣向ではない。それでも彼女は放っておけない子だったから、潜在意識では好感を持っているのかもしれない。でも持っているとしたても、恋愛感情ではない。彼女に対してそう思ったこともないし、逆にあいつと居た方がずっと幸せだと思う。結末を知っているから、ずっと友達として一緒なんて望んでもいなかった。
でも逆に自分は事実を認めたくなかっただけなのかもしれない。友達として、好きになったのかもしれない。はっきり言って、自分の感情はなんなのか、自分では分からない。もしかしたらこの本を読んでいる君になら、分かるのかもしれない。
「おにぎりをいつ食べようかなーって思っていてさ」
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