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光るものを何一つ得られなくて長い旅をしただけに終わった者たちが容赦なく弾かれていく。人数がどんどん減っていく。追い立てられるように王宮の門から出されていく。
登宮達成が叶わなかった者たちは、王都内の宿泊施設に連れて行かれると説明を受けた。
椰子と夏目は明日の午前中にはその宿泊施設からも出なければいけない。そのまま村に帰るのか。王都に留まって官吏登用を望み、試験に挑むのか。
九弧は詳しく聞いていなかった。
登宮を果たそうと意気込み、かろうじて王宮に着いた者たちの大多数が第一段階の選別で振り落とされた。
広場に残された者は十数名。団で括ると五団あるかどうか。選別の第二段階が始まる。各々、持ってきた光るものを手に取るように指示された。
光り珠、光り苔を手にする。
わたしたちはどうなるのだろう。
以知古と杏は戦々恐々の面持ちだ。
ふっと夜空を見上げる。
月が翳ってきた。
雲が出てきた?
否、雲はない。
赤銅色をしていた月がサアッと色を失っていく。赤が薄まり橙となって黄色を帯びる。玉子色へと色褪せ、青みがかってきた。
月の色が変化していくと同時に月光の明るさが強まってくる。手のひら上の光り珠の赤い光。光り苔の緑の光。それらの輝きも増してきた。
「机の上に光り物を置きなさい」
選出官が珠と苔を吟味するように、皆が居並ぶ長机の端から見ていく。
「光ってるね」
「不思議だな」
光り物を机に置いたにも関わらず、手のひらが光っている。以知古も杏も八朔も九弧もわたしの手も、赤と緑に淡く光っている。椰子と同じく久しぶりに見た文旦と青桐、天草の手も緑色に光っていた。彼らも次王に近いところに居るのだ。
わたしも次王に近いところに居る。
何も持っていないのに光っている。
今宵は数年に一度の青月の夜。
月がゆっくり青色になりゆく。
王宮広場が晴天の青に染まる。
青色の中で、金色を感じた。
望郷草は七色に輝くと聞いている。
金色はなんだろう。何が輝いてる?
わたしは周囲を見渡す。
以知古がわたしを見る。
杏がわたしに目を据える。
この金色は何?
訊こうとした。
「花梨の背嚢の中から光が漏れ出ているわ」
杏の疑問を受けた皆がわたしの背嚢を見た。金色などではない。七色の光が滲み出ていた。
「望郷草だ」
誰かがつぶやいた。
「見せてください」
いつの間にきたのか。
わたしの背後に胡桃が立っていた。
「あなたの背嚢の中の薬草をすべて見せてください」
胡桃の目が焦りを帯びていた。
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