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「篤子ー。私の箏の調べ、ちゃんと聴いていてねっ」
「えぇ、もちろん」
楽奏が始まった。
私は、奏者の皆様が居並ぶ横で、祝膳を前にひとりで座っている。
珠子曰く、私のための宴だから、私は楽奏には加わってはいけないらしい。残念だわ。だって、とても珍しい楽奏なのに。
箏の琴を、珠子と光成お兄様が。琵琶は礼都女。笛は明親。源建様はお歌を担当。それから——。
「何かしら。あの赤い琵琶は。音色は琵琶とは似ても似つかないけれど」
武弥が弾いている楽器は、躑躅のように真っ赤な色が施された、びいんっと振動を響かせる、不思議なものだった。
武弥自身も初めて手にすると言っていたけれど、これもうずら丸が妖術で演奏できるようにしているらしい。遠い未来の世から、今宵のために運んだのだと。
「『えれきぎたー』という名称なのだと光成お兄様が教えてくださったけれど、本当に不思議な音色よねぇ」
きっと、もう二度と体験できない貴重な楽奏のはずなのよ。ああぁ、私も和琴で参加したかったわっ。
イラスト:奈倉まゆみ様
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