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「あつこ、たのしくない、か?」
「うずら丸っ。やっと姿を見せてくれたのね」
良かった。邸内のどこかに居ると思っていたけれど、宴が始まっても現れないから心配していた。
「ためいき、ついてたぞ。うたげ、たのしくない? いやか?」
「いいえ、とても楽しんでいるわよ」
誰にもわからないように密かに零した溜息は、たぶん私の傍らで隠形して潜んでいた妖猫にだけは丸見えだったようだ。可愛らしい心配をしてくれるお友だちが愛しい。
「それに嬉しい。うずら丸が膝に乗ってくれているから。私のために術で奏者を集めてくれたこともよ?」
真っ白な体毛に顔を埋め、ぎゅっと抱きしめると、ごろごろと嬉しげな声を聞かせてくれるところも可愛い。
「よかった。たけるをよんだこと、きにくわないのかと、おもって、もうすこしで、たけるをふきとばす、ところだったぞ」
「まぁ、駄目よ。建様はお歌を担当してくださっているのに」
「びゃくえんさまにも、とめられた。ねっぷうで、ふきとばしたら、こげるからって。だから、がまんした。まもりは、すこしなら、やっていいって、いったけど」
「えっ、真守様もいらしてるの?」
建様をかばう言葉を続けるつもりが、真守様のお名前のほうに反応してしまった。
「どちらに? ねぇ、うずら丸、真守様はどちらにいらっしゃるの?」
それだけではなく、お姿を探し求めて、きょろきょろと視線をさまよわせてしまう始末。はしたないことに。
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