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「ところで! そのお相手は、どなたなの? ここまで話したんだから、是非、教えてっ。宮中で知り合ったお方かしら?」
「あ、えーと……宮中、になるのかしら。厳密には違うけれども」
「あら? 今のお返事で、私、わかっちゃったかもー」
「え? 何がわかったの?」
「はいはーい。もう納得できたから、この会話は終了でいいでーす! 私、お兄様から伺ってるのよ。『お』で始まる職業の少年と篤子が密会を重ねてることー。お兄様は少年の飼い猫に会いに行ってるとおっしゃってたけど、そんなわけはないもの。やっぱり私の睨んだ通りだったのねっ」
「珠子? 『お兄様から伺ってる』の後、なんて言ったの? 扇で口元を隠したら聞こえないわ」
目元がすごくにやにやしてたから、気になる。
「あ、そうだわ。そんなことより、今夜の予定を教えてくれる? あなた、今夜はまだ、こちらのお邸で過ごすのかしら」
「〝そんなこと〟って……」
珠子の会話の展開についていけない。
私の心に新たに住みつき始めた相手は誰なのか教えてと請うておいて、ろくなやり取りもせずに会話を終了。私のあやふやな回答で、何が納得できたのか。
しかも、緊張しながらも珠子が相手だから真摯に答えようとしてた内容を『そんなこと』呼ばわりされたわ。
どういうこと? 私のほうは何も納得できてないわよ。
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