1 あの坂を越えたら

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コンビニ前の国道へと出る。 勢いよく、自転車を漕ぎ出す。 ビンディングペダルは引き足が肝心だ。ペダルを踏み込む動作より、引き上げる動作のほうが、自転車を前に進める。 東に向かう国道は緩やかな上り坂だった。歩いていても気づかないくらいの緩い勾配の道を進む。 ロードバイクに乗るようになって、一年半と少し。 裕斗と仲良くなったのは、『平坦な道路なんてほぼない』という他愛もない話からだった。 ──私、こんなにも日本にまっすぐで平らな道が存在しないとは思わなかった。 ──わかる! 俺も。まっすぐに見えても、道はだいたい曲がってるし、どれだけ平らに見えても上りか下りのどっちかだよな。 部活を頑張れたのは裕斗がいたからだ。 練習が辛くて何度か部を辞めようかと思った。だけど、その度に、裕斗が相談に乗ってくれた。 裕斗を目で追うようになって。誰にでも優しいことに気がついて。 告白したかったけど、自信がなかった。 裕斗の視界で特別な存在として輝くには、何か一つ、自分に取り柄がないといけない気がした。 例えば、自転車乗りとしての格好いい自分だとか。
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