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国道の分岐点に差し掛かった。暗いトンネルに続く山道を選ぶ。ここから斜度がいきなり上がる。
6%の勾配は、斜度3.26度。百メートル進むごとに、約三メートル垂直に上る計算だ。
ハンドルのブレーキレバーを押す。カチカチっとギアを切り替える。ギアの調節も重要だ。軽すぎると沢山回しているのにちっとも進まないし、重すぎるとそもそもペダルを回せなくなる。
ベストのギアに設定した。ぐん、と立ち漕ぎする。
「いける、いつもの調子!」
道路脇から木々が迫ってくるような坂道を突き進む。立ち漕ぎを終えた。道はまた平らに近くなる。
トンネルに入る。隣を車がびゅんと通過する。自転車のバックライトちゃんと見えてるよね、と必死でペダルを踏み込み引き上げる。
スピードを落とせば車が作り出す横殴りの風に襲われる。排気ガスのにおいで詰まりそうな暗闇を驀進する。
道を走るのにはペース配分も重要だ。ハンドル中央部のパワコンに視線を走らせる。速度メーターの表示速度は、時速二十八キロ。まあまあの数字だ。
トンネルを抜ける。
視界が開けた。
信号にひっかからず走ることができた。今日は調子がいい。
橋を越える。山の中腹から見下ろす景色は気持ちがよかった。橋から分岐する道の左側を選ぶ。ぐんぐんペダルを回す。
「っしゃ、こっから!」
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