1 あの坂を越えたら

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国道の分岐点に差し掛かった。暗いトンネルに続く山道を選ぶ。ここから斜度がいきなり上がる。 6%の勾配は、斜度3.26度。百メートル進むごとに、約三メートル垂直に上る計算だ。 ハンドルのブレーキレバーを押す。カチカチっとギアを切り替える。ギアの調節も重要だ。軽すぎると沢山回しているのにちっとも進まないし、重すぎるとそもそもペダルを回せなくなる。 ベストのギアに設定した。ぐん、と立ち漕ぎ(ダンシング)する。 「いける、いつもの調子!」 道路脇から木々が迫ってくるような坂道を突き進む。立ち漕ぎを終えた。道はまた平らに近くなる。 トンネルに入る。隣を車がびゅんと通過する。自転車のバックライトちゃんと見えてるよね、と必死でペダルを踏み込み引き上げる。 スピードを落とせば車が作り出す横殴りの風に襲われる。排気ガスのにおいで詰まりそうな暗闇を驀進(ばくしん)する。 道を走るのにはペース配分も重要だ。ハンドル中央部のパワコンに視線を走らせる。速度メーターの表示速度は、時速二十八キロ。まあまあの数字だ。 トンネルを抜ける。 視界が開けた。 信号にひっかからず走ることができた。今日は調子がいい。 橋を越える。山の中腹から見下ろす景色は気持ちがよかった。橋から分岐する道の左側を選ぶ。ぐんぐんペダルを回す。 「っしゃ、こっから!」
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