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目の前に聳え立つのは、勾配11%、斜度6.16度。
百メートル進むごとに、道は、約六メートルも上がっていく。しかもカーブだ。車にも注意しなくてはならない。
速度を保ってひたすら漕ぐ。
が、何度目かのカーブで足が上がらなくなった。
最終手段だ。ギアを一番軽くする。足がくんっと前に出る。ペダルがくるくる空転する。
必死で踏み込む。
すぐに踏み込めなくなった。精一杯自分の体重をペダルにかけても、もう、自転車が前に進まない。踏み込みの筋力を使い切ってしまった。
あっという間に、自転車がふらつく。これ以上は、危ない。
「ちっくしょー!」
凛は足を捻って、クリートからシューズを外した。ぱちんという音が、明るくなった山道に物悲しく響く。
山道の隅。
肩で息をしながら、凛は、自転車を降りて、手で押した。
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