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第29話
どこのどいつだ、と口々に叫ぶ人狩りの男たち。
そう言われたメイユウは、特に気にすることもなく彼らへと近づいて行く。
いかにも気が進まなそうな――ダルそうな足取りだ。
「メイユウ! 来てくれたの!?」
ランレイが嬉しそうに叫んだ。
その名を聞いた人狩りたちの顔が次第に青ざめ、動けないでいるランレイとシャンシャンの元から離れていった。
メイユウだと?
あの無免許で店を開いているジャンク屋か?
なんでもそうとう腕っぷしが強いとか聞いているぞ?
ポツリポツリと呟くように言った人狩りたちは、そのままルーファンの後ろまで下がっていった。
「あれ? わたしってそんなに有名だっけ? 今まで店の宣伝とかしたことなかったんだけどな~」
本人に自覚はないようだが。
人狩りたちの態度を見るに、どうやらメイユウの店はここローフロアでそこそこ知られているようだ。
「おいあんたら。ちょっとその身体を見せてみな」
メイユウは、動けないでいるランレイとシャンシャンに近寄ると、彼女たちの身体を調べ始めた。
黒く侵食された腕や手足に触れ、どのようなウイルスなのかを判断している。
「あらら、こりゃ一度シャットダウンしてセキュリティソフトで隔離してから除去しなきゃいけないね。ったく、メンドくさいな」
「メイユウ……どうしてお前がここに……?」
シャンシャンは、義体の状態を確認したメイユウを眺めながら訊ねた。
その傍にいるランレイは、先ほどの嬉しそうな顔とは打って変わって気まずそうにしている。
「いいから休んでなよ。お前が出てくるといつも話がややっこしくなるんだから」
一通り状態を確認したメイユウは、体をルーファンや人狩りたちがいるのほうへと向けると、かったるそうにその口を開いた。
「揉め事はお互いにメンドーなのでやめませんか? こっちはこいつらが無事なら何も言うことないので」
言葉では下手に出ているが、高圧的な物言い。
それを聞いたルーファンは、呆れた様子でため息をつく。
「いいのかい? アタイの依頼主は人狩りだよ? だからそこの正義の味方さんは突っかかって来たんじゃないの?」
ルーファンがいう正義の味方とはシャンシャンのことだろう。
つまり彼女――ルーファンが言いたいのは、ここで場を収めて正義の味方であるシャンシャンの仲間であるメイユウはそれでいいのか? という意味だった。
「あ~いいのいいの。わたしは別に正義の味方じゃないから。どうぞ好きなだけ人狩りでもボンタン狩りでもしてください」
「食えないねぇ。でも、ここでその電脳武人を始末しとかないと、うちの依頼主をまた襲うんじゃないのかい?」
両手を広げながら訊ねるルーファン。
そのリラックスした態度を見るに、疑っているというよりは最初から決まっているだろうと言っているようだ。
「あ~大丈夫大丈夫。わたしからこのくっころ武人にはよく言っとくから。『ダメだよ~。もうヒーローきどって悪い人を襲うなんて~』とかなんとかいってね」
メイユウがそう言うと、ルーファンの後ろにいた人狩りたちが騒ぎ始めた。
そんなこと信用できるか。
どうせ身体が動くようになれば、また邪魔しに来るに決まっている。
――と、ずいぶんと強気なことを言っている。
「って、アタイの依頼主は言っているんだけど。わかるよね? こっちも仕事なんだ」
依頼主である人狩りたちの言葉を聞いたルーファンは、背中に収めた双鈎を両手へと持った。
そして、ユラユラと揺れながらメイユウのほうへと歩いて来る。
それを見たメイユウがゴキゴキと首を動かしながら、お尻にある腰袋からずいぶんと長いモンキーレンチを出す。
その姿を見たルーファンは、うっすらと笑みを浮かべた。
対するメイユウは長いモンキースパナを肩にかつぐと、大きなため息をつく。
「あんたもずいぶんと仕事熱心だね。あれだよ~。そんなんじゃブラック企業に勤めているのと一緒だよ。せっかく個人事業やっているんだから、もっと気楽にやらんと重い病気になって家から出られなくなっちゃうよ~」
「ご忠告ありがとさん。じゃあ、始めるとしようかい」
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