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第40話
休憩もそこそこに――。
再び歩き始めたメイユウたちは、舗装された道を見つけた。
街灯もあり、まだ真新しい使用されている道だ。
そこから道なりに景色を見るに。
どうやらこの道は、もうだいぶ近づいたハイフロアへと続いていそうだった。
「これが道路ってやつ? ねえメイユウ。これって車が走る道だよね?」
舗装された道を初めて見たランレイは、興奮気味で訊ねた。
だが、メイユウはよほど疲れているのか、ただコクコクと頷いているだけで返事をすることはなかった。
いや、疲れているというよりは面倒くさいといったところか。
その姿は、子供の相手を適当にするときの母親のようだ。
そんなやり取りを続けながらついにメイユウたちは、ハイフロアの前までたどり着いた。
「へえー、街の周りには白い壁があるんだ。面白いねぇ」
街を囲っている真っ白な壁を見上げなら、ランレイは物珍しそうな視線を送っていた。
それから、壁伝いに歩き始めたメイユウたち。
ランレイは、どこまでも続く白い壁を見ながら、ひょっとしたら出入り口はないのではないかと心配になってきていた。
だがそんなランレイの不安は、見えてきた扉のおかげで解消される。
「はぁ、よかったよ。てっきり出入り口がないかと思っちゃった。それで、一体どうやって中に入るの?」
ホッとしたランレイが訊ねると、メイユウはスッと扉の前に出る。
扉には、中に入ろうとする人物を調べるセンサーのようなものが付けられていた。
生体認証だろうか。
おそらくハイフロアに住む者――。
住民登録されている人間以外では入ることはできないのではないか。
ランレイはそう考えていたが――。
「……開けゴマ」
メイユウがそうポツリと言うと、その白い扉が開いていった。
それを見ていたランレイは驚愕。
そんなふざけた一言で、この最新式のセンサーが開くとは思わなかったのだ。
「えぇッ!? なんで開いちゃうんだよッ!」
「なにあんた、物語を作る仕事したいくせに知らないの? 扉を開けるときの呪文っていったら開けゴマしかないでしょ?」
「あれは岩の扉だから! アラビアンナイトの世界だから!」
「しょうがないなぁ。はいこれ」
メイユウは声を張り上げたランレイへ、腰袋に入れていた小さな水差しを渡した。
「どっから持ってきた! 魔法のランプらしきもの出して誤魔化してんじゃねえよ!」
「いいから見てろよ。こうやってこいつを擦ると――」
そして、メイユウは水差しをゴシゴシと擦り始めた。
まさか何か本当に起きるのかと、ランレイが水差しを凝視していると――。
「……さあ、願いを三ついうがいい」
「無理に魔人みたいな低音出してんじゃねえ!」
メイユウが、口元を隠しながら男の声を出そうしただけだった。
結局メイユウがどうやってあのセキュリティーが厳しい扉を開けたのかはわからないまま。
ランレイとメタルは先に行く彼女の後を追って、中へと入って行った。
しばらくトンネルのような暗い空間を進むと、奥から光が見える。
そしてついに暗い空間を抜けると、そこには見渡す限りの白いビルが立ち並び、道路には無人の車が走っていた。
「ここがハイフロア……」
ポツリと呟くランレイ。
道端にはゴミ一つなく、歩行者はいるがローフロアのように混雑していない。
吸う空気も匂いも清潔感があり、すべてが見えている建物ように、白く穢れのない空間のような場所だった。
薄暗い中でネオン看板が眩しく。
そこら中にゴミが捨ててあるスラムのようなローフロアの街並みとは全く違う。
ランレイは二つの街のあまりの違いに、ただ圧倒され言葉を失っていた。
「おいおい、なにしてんだよ? それよりも早くメタルの飼い主を捜しに行ってやろう」
そんなランレイの頭をポンポンと叩いたメイユウ。
ハッと我に返ったランレイは、早速メタルの様子を見る。
メタルはそんな彼女に気がつくと、ゆっくりと動き始めた。
「もしかして、飼われていた家に向かっているのかな?」
「ともかく、わたしたちはついて行けばいいんだよ。あいつの気が済むまでさ」
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