第41話

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第41話

それからメタルの後をついて行き、ハイフロアの街を歩いていくメイユウとランレイ。 やはり落ち着かないのか、それとも好奇心からか。 ランレイは首をキョロキョロと動かしながら歩いている。 反対にメイユウは、まったく街並みなど見ずに、大あくびしながらついていっていた。 「わぁ~メイユウメイユウ! スゴいねスゴいね!」 「はい、メイユウです。お願いだから少し静かにしてください」 他人行儀に返事をするメイユウ。 そのよそよそしい振る舞いは、大声こそ出してはいないが、彼女が苛立っている証拠だった。 だか、そんな冷たいメイユウの言葉など、今のランレイの耳には入っていない。 彼女はこの作り物ような白一色の街に、すっかり心奪われてしまっていた。 そんな彼女たちのことを、道行く人たちが訝しげな視線を向けている。 『あの女の人……ずいぶん派手な格好をしているわね。人として品格を疑うわ』 『それに連れている猫のなんて行儀の悪いこと。とても見ていられない』 ――など、辛苦な言葉もヒソヒソと耳に入ってくる。 それもしょうがない。 何故ならば、ハイフロアの住人たちは皆同じような清楚な白い服を着ているからだ。 そんな街中で、露出の多いチャイナドレス姿のメイユウは嫌でも目立ってしまっていた。 それと、ツギハギだらけのメタリックな猫とはしゃぎながら喋り続ける猫が一緒にいるのは、このフロアの人間なら誰でも怪しんでしまう。 「やっぱりここじゃ目立ちすぎちゃうわね」 メイユウはそうポツリというと、ランレイとメタルを抱えて、近くにあったアパレルショップへと駆け込んだ。 「いきなりどうしたの?」 「この格好じゃ目立つから、この店で着替えるんだよ」 ランレイはハイフロアの洋服屋と聞いて喜んだが、店内には一着の服もない。 それどころか店員すらいない。 ランレイは、そんな店の中を見て、目と耳を垂れされながら首を傾げる。 「ねえ、メイユウ。このお店って今日はお休みじゃない?」 「あんたは知らないみたいだけど。ハイフロアの店には、基本的に店員なんていないよ」 そういったメイユウは、店内に並んで設置されている鏡の前に立った。 頭の先から足の指まで映しても、まだ余裕のある大きな鏡だ。 メイユウが何をしようとしているのかわからないランレイは、さらに首を傾げている。 「ねえメイユウ。鏡の前に立ってなにしてるの?」 「まあ見てなさい」 すると、メイユウの目の前に立体映像のカタログが映し出された。 メイユウはそれをスライドしてカタログを開き、その中から一着のポンチョをクリックする。 「え……? えぇぇぇッ!?」 ランレイが驚愕の声をあげた。 それは、ただ鏡の前に立ってカタログをクリックしただけだというのに、メイユウの体に真っ白なポンチョが身に付けられたからだ。 「ど、どうなってるの!? 服なんてどこにもないのに!?」 「落ち着きなさい。これは本物じゃないのよ」 それからメイユウは、今身に付けたポンチョについて説明を始めた。 今メイユウが身に付けているのは、パッケージウェアと呼ばれるもの。 ただ着ている衣服の上から映像を重ねている、 いわば立体映像の服だ。 ハイフロアで皆インナーの上に着るのは、パッケージウェアが当たり前らしい。 この商品は、消費者や経営者にとって経済的にもよいシステムで。 たとえば年間料金さえ払ってしまえば、どんな服でも鏡の前に立てば、用意して着れるシステムになっている。 消費者は部屋に服をためる必要がなく、経営者は在庫を抱えずにすむ。 それは物に執着しない、いかにもハイフロアらしい流通の仕方であった。 「ねえねえメイユウ! あたしもあたしも! 次やりたい!」 「別にいいけど……。猫用の服なんて、そんなに種類ないと思うよ」 はしゃぐランレイへメイユウはそう言ったが、彼女は鏡の前で早速ポーズを決め始めるのだった。 「猫がグラビアポーズとっても需要が……。いや、むしろ猫だからいい人もいるのか……」 「なにブツブツいってんの? ほら早く着せてよ。あたしの番なんだから」
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