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「あ、ありがとうございます」
「いいのよ、今度から驚くフリだけすればいいから」
「は?」
「彼、これだけが楽しみだから」
「あ、ああ……なるほど」
地面に転がっている男に視線を落とし、頭を下げて去っていった。
「ぐおおおお~、よくも邪魔してくれたな」
「楽しんだんだからいいでしょ」
巳天 由子は言いながらしゃがみ込む。
「もっと楽しみたい」
「おまわりさん呼ばれたいの」
「ごめんなさい……」
変態の彼が許されているのには訳がある。
この男は実は強い、そのため他の変質者がこの近辺には近寄らないのだ。
他の変質者がいては自分もそうだと思われてしまうという感情から彼は他の変質者には厳しいのだが、誰が見たって同じ変態にしか見えないと思われる。
「あんまり無茶はしない方がいいよ」
「はい、そうします」
三十代の男が二十代前半の女性に頭が上がらない様子は滑稽にも見えるが、なんとなーく微笑ましい気さえしてこないだろうか。
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