奴隷の姿

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とりあえず一安心して龍さんから離れるため体を起こそうとした時、突然私の肩に置かれた龍さんの手に力が入った。まるで私を引き止めるようだったので、まさか怒られるのかと驚いて龍さんの顔を見ると、さっきまでうつ伏せだった龍さんの顔がこちらを向いていた。その目は薄らと開き、私の顔を捉えているようだった。 「メイ....」 微かにそんな声が聞こえた。その声に、私の心臓の鼓動が勢いを増すのを感じた。口から心臓が飛び出そうな程に。 何これ 訳がわからない程動揺している自分自身に気づいた時、いてもたってもいられなくなった私は急いで龍さんから逃れ、龍さんを布団にきちんと運ぶことも忘れてその部屋から飛び出した。一目散に自室に戻って障子を閉めた私はその場に立ち尽くした。心臓はまだ激しく収縮している。顔が熱い。どうしてこんなにどきどきしているのか。怒られもせず、ただ名前を呼ばれただけなのに。 メイ、おれのこと、すきでしょ? さっき龍さんに言われたそんな言葉を思い出した。    いやまさか、ありえない。  だって私は奴隷。 人と同じじゃない。  なのに、人に感情を抱くなんて、そんなの...  今まで人を好きになったこともないため、この得体の知れない感情が『好き』ということだという可能性も確かにある。  だとしても、そんなの、絶対、おかしい。    訳がわからずぐるぐるする頭のまま、私は(とこ)についた。何とか考えず早く眠って忘れてしまおうと思ったのに、覚醒している頭のせいでしばらく寝ることが出来なかった。
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