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翌朝、私は自分の役割をまっとうすべく、早々と目覚めて私は起きあがって昨日頂いた着物を身につけた。まだ表は薄暗い。環境が変わっても寝坊をしなくてよかったと、ひとまず胸を撫で下ろす。
奴隷は普段、着物など着ない。だが、ご主人様の夜の相手をするときは、綺麗な着物をお借りしたことがあるので、着方は知っていた。
昨日洗って綺麗にした髪は一つにまとめ、後ろと一緒にまとめられない微妙な長さの前髪は両側に流して耳にかけ、私は部屋を出た。
調理場に向かった私はこれまでも別の所でしてきたように米を釜でたき、火にかけた鍋で汁物を作ったりおかずをこさえたりと、朝食の準備を始めた。
全て準備が整った頃、丁度龍さんが起きてきた。
「おはようございます。」
私は声をかける。龍さんは驚いた表情で、でも寝起きの少し掠れた声で、
「ごめんね、作ってもらっちゃって。」
と、私に謝った。こんなことで謝るなんて、奴隷以前に、今のこの時代であっても不思議な行為だろう。
「やっぱり、何もしないのは良くないと思うので、家事は私に任せて頂けないでしょうか?」
龍さんの思うことは何となく想像がつく。だから私はそう提案した。私がいうと、龍さんは少し考えてる素振りを見せた。
「全部は流石にやってもらいすぎだから....じゃあ朝ごはんを作るのと、自分の部屋、調理場と食堂の掃除、お願いしてもいい?他のところは俺が掃除するし、料理は昼と夜は俺が作るから。」
「少なすぎます。」
割り振られた担当の数に不満で、私はすぐさま反論する。龍さんは苦笑いを見せた。
「んー、じゃあ、昼は一緒に作って、あと廊下の掃除は、お願い...しようかな?」
全部やるのに、と内心思いながら、でもこれ以上言っても無駄だろうと諦めた私は渋々承諾し、家事の分担が決まった。
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