奴隷の姿

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 それから二週間ほど、私は龍さんを観察しながらその家で過ごした。龍さんは相変わらず私をからかうのが好きで、でも優しさは尽きることはなかった。そのせいで、私の違和感のわだかまりは段々大きくなっていき、時に辛くなることもあった。もちろんそんなこと、龍さんには絶対に言わないが。    そしてもう一つ、龍さんにからかわれる度、龍さんと会話を重ねる度に、何かよくわからない感情をいだいていることに最近気がついた。龍さんが私をからかって顔を近づけてくる時、龍さんが笑う時に、初めの頃よりももっと、心臓の鼓動が早くなっているように感じる。最近はその度に、顔赤いぞ、と龍さんに言われる始末だ。誤魔化すように顔を背け、なってないです、と答える私を見て、龍さんはまた笑うのだ。 やっぱりこの人は私で遊んでいる。 よくわからない気持ちのせいもあって、そんな龍さんに苛立ちを覚えているのは正直な感情だ。  
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