奴隷の姿

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部屋に戻って勢いよく開けた障子をピシャリと閉め、私はそこに立ちすくんだ。  …やってしまった。  流石の龍さんも怒ったに違いない。折角よくしてくれているのに、私は失礼なことをしてしまったと、後悔の念が溢れ出てきた。  だが、同時に怒りを覚えている自分がいた。この家に来てから本当に色んな気持ちを覚えている。 それはつまりのところ、自分が奴隷であることを忘れかけているとも捉えられるのは忘れてはならない。それは決してあってはならないことだ。 私は奴隷。 奴隷でいなければいけないのだ。 罪に服するためにも、私は自分の運命から逃れてはいけない。  そのことは絶対に忘れてはいけないのに、気持ちが浮ついてしまうのは、私を人として扱う龍さんのせいだと、そう思ってしまった。これ以上、龍さんといたら、自分はいつか自分の罪も忘れてしまう。 もうこれ以上、この家にはいられない。
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