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「やっと目覚めたか。」
部屋に入らせてもらうと、ご主人様はそこに座っていて、私を見るなりそういった。
「申し訳ございませんでした。」
私は頭を畳につけて、謝る。
「何に謝っているんだ?」
不思議そうな声調で、ご主人様は言う。
「起床がこんなにも遅れてしまったことと、それと…」
何と言えばいいのか、迷いそうになったのだが、私の答えを待つご主人様を待たせまいと、私は続けた。
「それと、ご主人様の奴隷を一人、なくさせてしまって。」
私がそう言うと、ご主人様は声高に笑った。
「そんなことを気にしていたのか!あれはもう使い物にならんと思っていてな。どうせだったら戦わせて、死んでしまえばそれでいいと思って、一番腕の立つおまえとあいつを殺りあわせたのだよ。」
ご主人様は明るくそう答えた。
やっぱり、ご主人様は趣味が悪い。
「なあに、居なくなればまた買えばいいんだ。そろそろ飽きてきたし、入れ替えの時期かなと思ってた所だから、丁度良かったよ。」
ご主人様は軽くそう言った。
この人の言っていることは、時によくわからない。本当にこれが人間なんだろうかと、そう感じる時もある。
「おまえは使えるから、もうしばらく置くことにするよ。」
頭を下げたままだから、ご主人様の表情が見えないが、どんな顔をしているのか、声の調子でよくわかる。人間の皮を被った悪魔のような、不適な笑みを浮かべているに違いない。
またいつか、私は誰かを殺めることになるのだろうか。
でも、もしそうなってしまいそうになったら、今度は自分で腹を切ろう。
その日私はそう誓った。
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