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だが、あんな打ち合いは後にも先にも、あの日だけだった。相変わらず竹刀で喧嘩をさせ、見世物にされることはあるものの、誰かを殺さなければいけないような事にはならなかった。それはもちろん良い事なのだが、どこか晴れないものがある。私が殺した彼の無念な魂は、一体どこに行くのだろうか。
あの事件があってからというもの、他の奴隷の子どもたちは私を蔑むような、または化け物でも見るような目を私に向けるようになった。そして、一切会話もしなくなった。
それも仕方のないことだ。だから私は、言い訳などしてその子たちを恨むようなことはしなかった。こんな殺人鬼と同じ屋根の下で寝なければいけないその子たちは不憫だろうと、そう思うようにした。
だが唯一、ご主人様だけは私を気に入ってくれた。飽き性という性格もあり、一年や、長くても二年で奴隷を入れ替えるご主人様ではあるが、私だけは長い間その家においてくれた。
そのご主人様の下に置かれて五年。私が十三になる年に、私もついに入れ替えがされることになった。その時はもう、あの事件の日にいた子どもは誰一人いなかった。それでも、私が殺人鬼のことに変わりはないから、塞ぎ込んで生きてきたので、新しい子たちともあまり話すことはなかった。だから特に思い入れもなく、家族から離れたあの日のように、私は殺人の記憶だけを持ってご主人様の家を離れた。
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