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奴隷の姿
私のような日常を「悲惨」だとか、「つらい」だとか、そう言う人もいるかもしれない。
でもこのご時世、そんな人の方が少ないだろう。むしろ、当たり前だと思っている。少なくとも私の住むこの町の人たちは、私のような人間に対しては情けも何もかけやしない。
そうであっても、別に私はその人たちを恨まない。そういう運命なんだから、仕方のないことだと思っている。私の場合特に、このまま生きていかなければいけないのだ。一生かかっても償いきれない、その罪を償うために。
私の家族は貧乏だった。実際、多くの人たちがそうであっただろう。
ある日突然、両親はお金のために私を奴隷商人に売り払うことを決めた。私が七才の時だった。他の家も同じようなことをしていると知っていた私は、正直驚きもしなかった。私もきっと同じ運命なんだろうと確信していたからだ。
だから売られた時も、悔しそうで辛そうな両親とは正反対に、私は何も感じていなかった。悲しいとも、寂しいとも、憎いとも、何も。
私はこうなる運命なんだ。
ただ、それだけだった。
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