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どう過ごしたか分からない内に、1週間が経った。
小説を手に、庭をぼんやりと眺めている私に、ソーセキが「なぁお」と鳴きながら、ネコガミ様を持ってきた。
「なに?」
ソーセキはもう一度「なぁお」と鳴くと、ムチムチに中身の詰まった白猫のぬいぐるみをコロンと置いて、どこかへ行ってしまった。
私はソーセキの意図をなんとなく感じて、ネコガミ様を拾い上げた。
「ありがと。でもね、ネコガミ様にも叶えられないことはあるんだよ。」
ネコガミ様。白くてむっちりした直立の猫のぬいぐるみ。厚みのある長四角の体。短い足と、妙に長い手…ピンクの鼻と口に、青い左目と黄色い右目。ちっとも可愛くないのに、なんだか可愛い不思議なぬいぐるみ。もう随分前に駅の地下街のワゴンショップで衝動買いした。そこそこのお値段で、財布を出しながらも、私なんでこの子を買うんだろーと思った記憶がある。
ふてぶてしい顔と神秘的なオッドアイからなのか、杖なんか持たせたら仙人とか神様みたいだと思って「ネコガミ様」と呼ぶようになった。
まーくん…雅史さんと出会ったばかりのころ、海に行くというのに、台風が迫って来た。窓辺で空を伺っていた私は、ふと目に止まったネコガミ様を手にとって「ネコガミ様、明日天気にしてくだい!」と願った。
翌日、不思議なことに台風が予想コースを大きくはずれ、見事な青空になった。私は、ネコガミ様に感謝を告げて、弾む気持ちで家を出た。
それ以来、天気だったり、体調だったり、大事な試験、仕事で緊張しないように、そんなことをネコガミ様に願うようになった。叶う時も叶わない時もあった。かなりの確率で叶う…ような気がしていた…のだけれど…。
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