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「いってまいります。」
女の子は、主の像に祈りを捧げ、おばあさんにそう告げると、家をでました。
今日は土曜日で市場に山でとれた木の実やキノコ……果物を売りに行く日です。
女の子の家は山の中にあり、そこから市場がある街へは歩いて2時間くらいかかります。
女の子はすっかり昇ったお日様を見ながら山を降りて行きました。
ときどき秋の冷たい風が女の子のからだにふきつけました。
女の子は背中にせおった背負子(しょいこ)の背負いひもをぎゅっとにぎりました。
そろそろ冬が近くなっていますが、女の子のはいているのは穴のあいた靴そして、つぎをあてたスカートにシャツとこれまた古ぼけた肩掛けだけでした。
それでも女の子は歩いて行きました。
女の子は毎日街へ行きます。
月曜日から金曜日は学校へ行くため、土曜日は市場で物を売るため、そして日曜日は教会へ礼拝に行くためです。
前はおばあさんもいっしょに市場まで行って山のものを売っていましたが、さすがに山と街との往復が辛くなってきたようだったので、いまでは女の子が一人で市場へ行っています。
だいぶ日が高くなったころ、女の子はようやく街へとたどり着きました。
街は大きくて、工場からもくもくと上る黒いけむりが女の子の住む山の家からも見えました。
街に入って市場へ行こうとにぎやかな通りを女の子は歩いて行きます。
通りの両側にはお店がいっぱいに立ちならび、いろいろなめずらしいものがうられていました。
いつかはあんなお洋服を着てみたいなあ……歩きながら目にする洋服屋さんのかざり窓を見ながら女の子はいつも思うのでした。
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