彼の岸

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たどり着いたとたん、急に重力を感じてへたり込む。 「あの辺り、急に深くなるんだ。」 彼がつぶやく。 「そう…なんだ。」 私はまだ感覚も意識も浮遊感の中にいた。 「ごめんね。」 「…え?」 現実に引きも出される。 「邪魔しちゃったね。ごめん。」 彼は本当に申し訳なさそうに言った。 私は混乱した。彼のお陰で助かったのに、彼のおかげで微かに浮かぶ事ができたのに、何故謝るのだろう。 「置いていかれるって思ったんだ。沖に沖に遠ざかる姿を見たら、待って、行かないで、1人にしないで…!って…。」 私は何も言葉を返せなかった。 「君なりの願掛け?みたいなものだったんでしょ。」 彼は私のことをこんなにも理解しているのに、私は彼が言ったことの意味を十分には理解できなかった。 ただ、死にかけたのは自分なのに彼がこのまま消えてしまいそうで怖かった。私は彼を抱きしめた。 彼はかすかに笑って、 「帰ろうか。」 といった。
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