天地ひっくり返ったような気分やわ

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天地ひっくり返ったような気分やわ

 彼女にフラれたという友人のヤケ酒に付き合い、帰りに公園に立ち寄る。 「まぁ裏表のない人間なんておらんっちゅー事や」  飲みの席でも散々諭してきた言葉。それを聞いてか聞かずか、奴はふと鉄棒の方へ。 「めっちゃ懐かしい。逆上がりとか小学校卒業以来やわ」  そして鉄棒を逆手に握り、助走をつける。  砂を蹴り、くるんと華麗に回る。  ……が、着地するや「おえ~」と呻いて蹲った。  不格好やわ、それ。 「俺、三半規管死んどる」  酒のせいやろと笑い飛ばすと、地べたに座り溜息。 「どしたん」 「あんな?」 「うん」 「天地ひっくり返ったような気分やわ」 「……せやなぁ」 「二股とか、どないせぇっちゅーねん」  ……それで泣くなんて不格好やわ。  ほんまに。 「……しゃあないな」  じゃあ俺も、夜空見上げながら泣いたるわ。  一緒に。 【end】
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