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「ねぇ、彰吾。この子の名前なんだけど」 「あ、あぁ…」 すっかり大きくなったお腹を撫でながら、佳菜子はにこにこ笑っている。俺は思わず「ゆうき…とか?」と呟いていた。佳菜子はぽかんと口を開けてこちらを眺めると、クスクスと笑った。 「違う。ゆうきも良い名前だと思うけど、彰吾(しょうご)の字をとって彰良(あきら)がいいなぁって思って」 てっきり佳菜子のお腹にはゆうき君がいるのでは、と思っていた俺は二つ返事で子どもの名前を了承した。何となく佳菜子は“ゆうき”を提案するのではと思っていた分、それ以外なら何でも良かったというのが本音であった。 ずっと穿った見方を我が子にしてしまっていたが、本当に俺はあの落とし物から解放されたらしい。それからは不安だった反動なのか、すっかり“彰良”の誕生が待ち遠しくなっていった。少しずつ、ゆうき君やいじめっ子の事が頭から離れていった。
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