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三人
私は、高野麗という自分の名前が好きじゃない。
『綺麗』とか『麗しい』という外見でもないし、家業にピッタリ過ぎる姓を小さい頃男子にイジられ
「やーい、高野豆腐!」
等からかわれた。
キラキラネームが流行りだと聞けば一人娘の私に名付け、
「おじさん、これからは大豆ミートの時代だよ」と、同じ商店街の園田智生、皆からチイちゃんと慕われる私より二つ年上の男の子に言われれば、メインの豆腐作りそっちのけで大豆ミート惣菜を試行錯誤して作るという、何とも新しモノ好きの父だ。
うち高野豆腐店は、公園通り商店街の入り口付近にある店だ。
公園通り商店街は、忍祥池公園を擁する忍祥市内にある。
駅前に大型ショッピングセンターが出来てから、幾分客足が遠退いたが、老舗の和菓子屋他、昔からの常連客を抱える店が何件もある。
「まだまだシャッター商店街にはさせない!」と始終鼻息荒く、商店街のイベントの音頭とりをする父。
そんな父がリスペクトするのは、うちの向かいの菊池酒商店に住むチイ兄ちゃんだ。
チイ兄は、私が男子にからかわれた時『やめろよ』と相手を諌めてくれた。
小学校から抜きん出て頭が良く、催し物で子ども店長をやった時も目新しいアイデアを披露し、神童の呼び声高かった。
「チイちゃんが言う事に間違いはない」
と自分の娘と同じ世代の子に、絶大な信頼を置いている。
実際、大豆ミートは当たった。
菜食主義、ダイエット、宗教上…様々な理由で売れた。時には本業の豆腐より売れた。
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