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≪麗≫
最近、佑から連絡がない。
チイ兄ファンクラブの様なやりとりは、細々ながら続いていた。
彼女でも出来たのかな?と思っていた矢先、佑と同じ学校に通っている商店街の子から、
「佑、怪我して入院してるらしい」
と聞いてビックリした。
連絡すると即座に
「暇、超ひま」
返信がきた。
お見舞いに行くと、足にギブスを付けた佑がいた。
「よっ久し振り~又黒くなった?」
私はその台詞を聞いて、佑が珍しく荒れてるなと思った。
中学は陸上、高校ではボート部に所属し、私の肌はいつも焼けていた。周りにからかわれる位こんがりだった。
そんな中佑だけは、私の真っ黒に日焼けした肌を話題にしなかったのに…
「どうしたの?」
「ご覧の通り。これからって時期にやっちまった」
「治るんでしょ?」
「三年の春に復帰出来たら御の字」
「リハビリ頑張れば良いじゃん。間に合うよ」
佑がムスッとしてるのは分かったが、その時はそれしか言い様が無かった。
「コレ、御見舞い」
大人向けLEGOの小さいセットを渡した。
「暇だって言ってたから…」
足元を見ると、サッカー漫画が入った紙袋に『早く治る様に!』と、お見舞いメッセージが付いている。
その人にとって大好きな事が出来ない時、その事に関したモノは酷なのでは…と配慮してわざと私は、方向違いの見舞いの品にした。
「有り難う…そこ置いといて」
と佑は、足元を顎で示す。
「又来るよ。私、選抜に選ばれなかったから暇になったし」
新しモノ好きの血をひいた私は、高校でボート部を選んだ。
卒業後、家業にドップリ浸かる事は目に見えていたから、学生時代は好きにさせて貰っていた。
陸上から水上、勝手が違う様でいて体力が必要なのは変わりない。それに、忍祥池で小さい頃ボートを漕いだ記憶があるから、何とかなると思って入部した。
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