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《麗》
そんなに驚く事かな?!
佑は目をむいて驚いた後、ムスッとしている。
私に彼氏が出来ないと思っていたのかな…失礼なやつ!
「篠口寛太って覚えてる?中学で園芸部だった」
「…知らねっ…あっ!背が高くてボッーとした?」
佑が人差し指と一緒に、背けていた顔を私に向けた。
「ああ…まあ、そう」
寛太は昔からノンビリ屋で、動植物を育てるのが好きだった。
小学校のウサギ当番は、彼の店の野菜くずが重宝した。
「アイツが彼氏なの!?」
寛太は体の成長が早かったが、運動神経が壊滅的だった。
それに争う事がトコトン苦手だ。
「うん、そう。寛太ん家、うちと同じ商店街で八百屋さんやってるんだよ。だから小さい時から知ってるし…」
「えっ!そんな前から付き合ってるの!?」
佑が私の話を遮り、身を乗り出してくる。
「いやいや、最近だよ」
私が胸元で両手を振り否定した時、佑が理学療法士さんに呼ばれた。
結局その時はそれっきりになったが、帰宅後佑からバンバンメールが来た。
「きっかけは?」
「どんなところが好きなの?」
「アイツ、ペース独特だけど平気なの?」
「智生先輩は知ってるの?」等々。
確かに寛太はトロい。
彼の三歳年下の妹、咲花ちゃんの方がしっかり者だ。
また寛太のお父さんはシャキシャキ威勢が良くて、物凄いギャップの親子なのだ。
私も寛太とは、会えば声を掛ける位の仲だった。それ以上でもそれ以下でもなかった。
でも大学に入ったチイ兄に彼女が出来、真剣に付き合ってるみたいだと知って悶々としてた時、私は喫茶ビーンズに足を運んだ。
そこは商店街の外れにある、時が止まった様な喫茶店だ。
ボッーと気を休めたい時にピッタリなのだ。
メニューもレトロ、おまけに未だゲームテーブルが健在というレアな店。
そこで無心にゲームをしてる寛太に会った。
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