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《佑》
リハビリ後真っ直ぐ家に帰る気がしなくて、公園に入り芝生広場に立ち寄った。
木々の間から公園すぐ横にある、長兄が営むテイクアウト専門店の灯りが見える。夕飯の総菜を買い求める客達の影。
この時期、陽が落ちるのが早い。
俺は芝生に寝転んで薄墨色の空を見上げた。上空の雲の動きは、ゆっくりだが流れてる。
時は確実に流れる。
物事は変化する。
いつまでも智生先輩の後をくっついていると思ってた麗。
昔より強い好意を麗に抱き始めていた自分。
俺は携帯を取り出し、彼女に篠口との交際の馴れ初め他、質問を矢継ぎ早にメールした。
返ってきた答えに、俺は更にダメージを受けた。
俺と同様に篠口の進路の事とか、親身に相談にのってやってる末の交際。それも時期かぶってるんじゃねって位、つい最近の出来事。
別に麗が二股かけてた訳じゃない。
友人の間柄だったのを、片方の男は変化させ、もう片方の男は出遅れたってだけの話。
携帯を持つ手が力なく、冬枯れした芝生に落ちた。
ごろりと横を向くと、ちくちくと芝の先が頬に当たる。普段は別段感じない触感が、痛いと感じるのは俺の気持ちのせいだろう…
俺は恋愛というフィールドで攻め時を読み損ない、シュートするタイミングを逃した選手になった。
そして、その失意から暫く抜け出せなかった。
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