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それから度々私は、幹さんとチイ兄から伝言を頼まれる様になった。専ら2人の待ち合わせ場所や日時等。
直接連絡を取り合えば良いのにと思い、一度尋ねてみた事がある。するとチイ兄は気まずそうに
「家から携帯にかけると電話代かかるだろ?」
同様に幹さんは
「チイは携帯持ってないだろ?それに家に電話はちょっと…かけづらいんだ」
そう言って苦笑いされた。
その時の私は、幹さんが電話をかけづらい理由が分からなかった。後の偶然から、彼がチイ兄の腹違いの兄だと知って納得がいった。
時々幹さんを苦手だと感じるのは、彼の相手を見透かした様な言い方だ。
私が面倒くさそうな態度を示すと、
「でも、この伝言ゲーム…お嬢ちゃんにもメリットあるよね?」
「!?」
知り合って間もないのに、私のチイ兄に対する恋慕を見抜いた幹さん。
確かに伝言役のお陰で、私はチイ兄と話す機会が増えた。
部活での活躍著しく、遠い存在になりかけたチイ兄。共有する内緒に心ときめいた。
でも!
そんな密かな喜びを、指摘してほしくない!
なんと言うか幹さんは時折、人をカチンとさせるのだ。そこがチイ兄と明らかに違った。
似た容姿を持つのに、
一人は圧倒的な陽のオーラ。
もう片方は、変幻する負ののオーラを纏う。
太陽と月みたいに統べる世界が違うから、2人は仲が良かった。
チイ兄が高校生になり携帯を持ったのを機に、伝言ゲームは終わった。
以降2人の間で、どんなやり取りがなされたか私は知るよしもない。
だが10年後兄弟は力を合わせ、2人の父親の事業、芸能事務所を継承する事になる。
結局チイ兄は、パンデミック中悩みながら勤めた商社を辞めた。
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