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《麗》
一か八かで投げかけてみた。
ホント、駄目元。
真向かいで狼狽してるチイ兄。
「何言ってんだ!佑と結婚前提なんだろ!?」
あ~聞きたくない、真面目な答え。
チイ兄が商店街から居なくなる…
実はそれが、私にとってここ一番の衝撃だった。
佑との遠距離で感じる寂しさより、きっと淋しいだろう。今度ばかりは親しい人の門出を快く見送れそうにない。
色仕掛けなんて、ガラでも無いのにやってみた。
多少効果がみられたが、チイ兄はアッという間に見開き気味だった瞳を整え、呼吸も落ち着かせてる。
そんな急いで平常心に戻らなくて良いのに…
第一、佑が言い置いていった『結婚前提』も、真剣に考えると結婚したら佑は、私と一緒に豆腐屋を継ぐのか!?って話。
それか私が店を辞めて、彼の赴任先に付いていくのか!?
その辺のとこを詰めないまま、交際が始まった。
毎晩かかってくる電話で、佑の愛情深さは身に染みて分かる。
だが近頃では、どうにも交際に『結婚前提』と付けた理由が、恋愛感情が高じてより私を縛る為の様な気がしてる。
「その話ね~全然煮詰めてないから。どう?チイ兄、引っ越すんだし一度きりのお試し!」
何かの勧誘みたいに気軽に誘う。
重くならない様に。
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