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案の定、
「麗、お前飲み過ぎ!」
お酒のせいにされた。
「佑に会えなくて寂しいからって、俺以外の男に酔っ払って迂闊な事言うなよ。痛い目あうぞ!」
そうじゃない!
欲求不満でチイ兄と寝たい訳ではない。
私が今みたいな生温いポジションを捨て、はっきり『好き』って伝えれば彼は私の感情を、幼馴染みの延長の『好き』だと偽るだろう。
私をいつまでも近所の妹分としてた方が、彼にとって都合が良いから。
この街で誰とも揉めることが無い、居心地の良い立ち位置が確保出来るから。
もしチイ兄と一緒になれるなら、私は店を辞めてもいい。何処までも付いていく。
そんな激情を掻き立てる異性は、彼だけ。
チイ兄はこの商店街を出て、もっと洗練された街に行く。
今以上に手の届かない人になる…
私の葛藤を余所に、チイ兄は小言を言いながら私にデコピンをする。
「痛っ!」
泣きそうになる。
実際、涙がじわりと目尻に浮かんだ。
「痛いよ~チイ兄!ちょっとからかっただけなのに~」
結局、私は逃げた。
私にとっても居心地の良い立場に…
その言葉を聞いて、心底安心した顔で笑う彼が疎ましい。
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