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「でもな、画面の前に座ってるだけだと、働いてる気がしないんだよ。世界中飛び回りたくて入社したのにな~」
チイ兄は焼酎の水割りを飲みながら愚痴る。
「チイ兄は、労働=汗水垂らしてだと思ってるの?意外と古いな~」
私も良い感じに出来上がってる。
待ち人来たらずで、2人とも結構呑んでる。
「お、麗ちゃん語る!?」
「語る語る!そりゃ、うちみたいな豆腐屋や酒屋さんは体力勝負のとこあるよ。でも画面見ながら冷や汗かく時だってあるでしょ?人それぞれだよ」
「まあな…」
そう言ってチイ兄は首をコキコキと回し、溜め息をついた。
その姿がらしくなくって、バシンッと背を叩く。
「しっかり!チイ兄!それにしても佑、遅いな―」
イテぇと呻くチイ兄を無視して、私は店の扉の方に首を伸ばす。
その日は待ち人、関口佑を交えた三人で飲む久し振りの会だった。
佑は、私の中学の時の同級生だ。
佑が住んでる地域と、私達商店街の子どもは小学校が別だ。中学校で二つの校区が合流する。
チイ兄が中3でキャプテンの時、サッカー部は全国大会まで驀進した。商店街は大騒ぎ、横断幕が掲げられた。
当時新入部員の佑はチイ兄に心酔し、高校も同じとこを目指した。
なので二人は中学高校と、サッカー部の先輩後輩の仲だ。
私は彼らと違う公立の商業高校に進学した。何の因果か私は佑と中学三年間、同じクラスだったせいで卒業後もメル友として続いた。メール内容は勿論チイ兄ネタだ。
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