三人

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「佑、顔合わせなんだっけ?」 チイ兄が枝豆を口に放り込みながら聞いてくる。私は思わず 「んぐっ…そう」 つくねを咀嚼中で、むせた。 最初佑から『今週末、帰省する事になった』と、急に連絡があった時は?マークだった。彼は住宅手当が手厚い会社に就職し、家賃が助かっているとはいえ、勤務地が此処から遠方なので、帰省にお金が掛かるとボヤいてたばかりだったから。 理由を聞くと彼の双子の妹、綾香ちゃんの結婚が決まり、家族顔合わせなんだとか。 「綾香ちゃん、キツい感じの美少女だったよね」 チイ兄は記憶力が良い。 私は中学時代、彼女と一度も同じクラスにならず、私は陸上部彼女は手芸部で、接点がなかった。 しかし佑の忘れ物届けや、サッカー部の応援で、私もチイ兄も彼女に多少面識がある。 「…チイ兄のタイプだった?」 「大人になってから会ってないから、何ともな」 と言いつつ、チイ兄はグラスを傾けた。 「そう言えばチイ兄、美人の彼女は?」 チイ兄は軽くブッと吹き出し、私の方を向いた。 「お前っ、見たの?!」 私はへへっと笑い、 「私と佑は、チイ兄親衛隊だから~」 底の方に残っていたビールを飲み干し、おかわりを注文する。 そうでも言ってないと側にいれない位、本来チイ兄は手の届かない人なのだ。 ルックス然り、文武両道の優秀さ然り。 彼のところと違って家業を継ぐ事を、私は小さい頃からインプットされてきた。 だから私は商業高校を出て直ぐ、本格的に高野豆腐店で働き始めた。 それまでの店番とは比べものにならない程大変だった。早朝からの豆腐作りはつらい。 だが勉強が苦手な私には、体を動かす方が性に合っていた。
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