三人

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「別れたよ」 「よっ!お待たせ」 チイ兄と佑の声が重なった。 話に夢中で、佑が店に入って来たのに気付かなかった。 チイ兄の両肩に手を置いたまま佑は、 「誰と誰が別れたって?」 「チイ兄、彼女と別れたんだって」 佑がコートを脱ぎ 「ああ、あの彼女?」 私の隣に座りながら、 「生1つ」 と注文した。 「えっ佑も、会った事あるの?」 「俺の最後の試合、2人で応援に来てくれたんだよ」 「ああ…私が簿記の試験で行けなかった時の試合?」 「そう」 そこにチイ兄が 「っていうか、大分前に別れてたから」 私達2人に割って入る。 「いつ?」 私が前のめりに身を乗り出すと、 「社会人になって一年目位かな」 チイ兄は、落ち着けとばかり両手を動かした。 「美人だったのに?」 枝豆に手を伸ばしながら、佑が言う。 「ん~お互い、会う時間がなかなか取れなくなったのと、早く結婚したい人だったんだよね、彼女」 「すれば良かったじゃん」 佑が平然と茶々を入れる。 佑のやつ! その時ビールが来て、私は乾杯の音頭をとった。 「はぁウマイ!」 美味しそうに喉を鳴らす佑から、早速情報収集をする。 「綾香ちゃんの相手どうだった?」 「俺らより一つ年下、同中出身」 「マジ?近所?私、知ってるかな?」 佑は首を振り 「多分知らないと思うよ。本人、不登校だったって言ってたから」 「ふーん」 そう言えば綾香ちゃんは昔から、好みがマイ基準の人だった。 「佑、今夜はこっちに泊まるのか?」 チイ兄が尋ねる。 「いや、帰るわ」 佑はチラッと私を横目で見て続ける。 「母親のマンションは居づらいし、兄貴んとこは落ち着かないから」 私は少し顔を赤らめながら、チビチビとおかわりしたビールを飲んだ。 「さっきの話に戻るけど、チイ兄は結婚考えないの?」 メニューを見ながら佑が話題をぶり返す。 「んーまだ早いって思っちゃうんだよね。社会人になってやりたい事もやりきれてないし」 チイ兄が店員を呼び 「好きな人と遠距離だったり、忙しくて会えないなら、籍を入れるのも手だと思うけどね」 佑が料理を注文する。
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