三人

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今度はチイ兄が前のめりに 「佑は、付き合ってる人いるのか?」 聞かれた本人はメニューを閉じ、頬杖をついて私を見やる。 「ん、告白した(ひと)ならいるよ。麗、もうそれで最後な。顔赤い」 と言って私のジョッキを指差す。 その甘やかな空気で察したのか、チイ兄は私達二人の顔を交互に見て 「えっ?えっ!お前達!?」 「そ、麗に結婚前提の交際を申し込んだの。俺」 何故か佑は、試合中の闘志漲るFWの顔つきになってチイ兄を視ていた。 ≪麗≫ もう!何で、チイ兄の前でっ~! 返事は保留で、佑も待つって言ってたのに! 佑がこの秋移動する際、告白された。 佑の勤務先はゼネコン。 所属する部署は特殊技術を活用する大規模なプラント建設の受注が多いため、全国どこでも飛ばされる。工期が終わるまで会社が近くに住まいを用意してくれる。 入社当時から関わってきた工事が終り、次の現場は帰省に飛行機を使わなきゃ無理なとこ。前の現場も距離があったが、今度はもっと帰れないからと前置きされ、告白された。 中学時代も末の子独特の愛嬌で、誰からも好かれていた佑。 私が陸上部の練習で校庭の外周を黙々と走ってると、サッカー部のチームメイトに声掛けしている彼がよく目に入った。 独身で体育会系とあって、社会人になってからも可愛がられてる事は、メールのやりとりで推測出来た。 一緒だったのは中学校の三年間だけ。 それなのに今に至るまで、佑が何やかんや私に接触してくる理由が、私を恋愛対象として見ていたせいだとは、青天の霹靂だった。
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