32人が本棚に入れています
本棚に追加
≪佑≫
三人で会うのは久し振り、…今日言うつもりはなかった。
だけど綾香のあのデレデレぶりを見て、硬派な人間が恋をするとこうも変わるのかと、驚いたのが一つ。
二つ目は、現時点で麗から未だ返事を貰ってない焦り。
そして智生先輩が彼女と別れていたと知って、身を乗り出す程動揺する麗の態度がトドメ。
その全てが合わさって、思わず俺は先輩を牽制していた。
好きという気持ちは勢いと、強い心が必要。
もうあの時みたいに機を逸したくない。
≪智生≫
驚いた…麗と佑がそんな仲になってるなんて。
最近店の仕事一辺倒の麗から、恋愛の素振りを感じた事がなかったから尚更だ。
佑もサッカー馬鹿から建設馬鹿になっただけで、色恋の相談は聞かなかった。
正直、麗は俺に、ずっと好意を持ってると思っていた。舌足らずに『チイちゃん』『チイ兄』と小さい時から、俺の後を付いて回っていた彼女。
家業を継ぐ事で、俺達より早く社会人になった。親父さん似で朗らかな性格、そして労を厭わないから、今では商店街のホープだ。
近頃では、俺の方が相談にのって貰う事が多い。
佑だってそうだ。
俺が中3の時、中1で上手いやつが入部してきたと騒がれてから、ずっと目を掛けてきた。
佑からも慕われてるという自負がある。
そんな年下の友人達が恋人同士!?
何だか取り残された気分だ…
だけど禍福と同じで、人の縁も糾える縄の如し。
紡がれる縁
離れる縁
あれがそうだったと、時が過ぎてみないと分からない。
最初のコメントを投稿しよう!