292人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
ひなこはその日のうちにご両親と一緒に帰っていった。
今後の事も話し合わなければいけないし、調べることも山ほどある。休んでいる暇などないのよ…と、母親に尻を叩かれ、母親は学校側をどう説得するか考えなくては、と意気込んでいた。こういう時、決意をした女は強いものだ。
帰り際、ひなこは「就職先の件、ありがとうございます。でも、無理しないでください。いろいろ調べて本当にダメだったら葉月さんを頼らせてもらいますから。その時は作業員として働かせてください」と、笑みを浮かべていた。どうやら葉月の不安は見透かされていたようだった。
葉月たちはひなこの後姿を見送り、にこやかに笑っていた。
「後は奈々子ちゃんだけか…」
架音が言うと、奈々子は目を伏せて苦笑いを浮かべる。
「きっとうちは無理。ひなこちゃんのご両親みたいに意見を言い合える関係じゃないから」
奈々子は半ばあきらめ顔だった。
「で、小野田はいつ家に帰る気?」
架音が訊くと、「明日、僕も家に帰ろうかな」と言った。
「まさか母さんが学校に怒鳴り込んでくれるとは思ってなかったから、少しでも早く安心させてあげたいし」
小野田がそう言うと、智久と雅広も顔を見合わせ、「じゃあ俺らも明日帰るか」と言った。
「そもそも俺ら、この失踪事件を楽しんでただけだしな」
雅広の言葉に葉月の眉がピクリと上がる。
「世間にご迷惑をおかけしたことを一生忘れないでいただきたいわ」
葉月が言うと、「あ、すみません」と、雅広は軽い謝罪をした。
最初のコメントを投稿しよう!