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『今日は何の日ー!?』
マイクを使って翔が大声を張り上げた。
ここは学校の屋上だ。屋上には3年生の代表たちが作った舞台がセットされ、その舞台の上で翔が生徒の熱気を煽る。
「がっこーさーい!!」
生徒たちも全力で答えてくれた。
『そうだよ!いろいろあった今日までの日々。しかし今日、ちゃんと学校祭を迎えることができましたー』
お手製の『翔くん大好き』うちわを自ら振りながら翔は屋上の真下にいる生徒たちに向かって声を張り上げた。
『それでは今回のイベントの主催者を紹介しよう!今城海治くんと磯野願くんだー!!』
翔が声を張り上げると、背後からゆっくりと二人で支え合いながら舞台の上にあがった。
まだ痛々しい顔の傷はあるものの磯野は登校できるまでに回復した。もともと見た目より怪我はたいしたことなかったようだ。骨折などもしていなかった。
二人が舞台に上がると、校庭から歓声が上がった。
『今日は呼んでくれてありがとうございます』
翔が深々と頭を下げると、『とんでもありません。こちらこそ来ていただけて光栄です』と、今城が答えた。
『今日はなんか…テレビで見たことあるアレやりたいんだって?』
翔が言うと『未成年の主張やりまっす!』と、今城が大きく手を上げる。
「キャー」と、校庭から大きな声が上がると、『じゃあ、僕らは向こうで穏やかにみんなの主張を聞きますか』と、翔が二人を連れ立って舞台から降りて行った。
テレビ番組と違うのはカメラがないことも含め、ここからは放送部がすべて取り仕切ることだ。
『一人目の主張は、1年C組……』
放送部の女子が名前を読み上げると、本人が舞台に上がる。微妙に盛り上がっている校庭の様子を見ながら、生徒が先生に向かって、『は行の発音が悪いこと』を指摘した。全員思っていたのか、笑い声が沸き起こる。
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