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『いや…そこはさ、大人の事情みたいのがあるし、勘弁してあげてよ』と翔が横から突っ込むと、先生は大きく頷き、「入れ歯直しまーす」と、手を上げて発言した。
『ほらーいろいろ事情があるんだよー』と、翔は笑いながら言う。
そこから数人の主張が続き、次の主張は2年A組だった。
『2年A組、柴田智久くん』
名前が呼ばれると、校庭がどよめいた。あちこちで歓声が沸き上がる。アイドルさながらの人気のようだ。
舞台に上がってきた智久は校庭を見渡し、ある一点を見てにっこり笑った。
『2年A組ー!柴田智久ー!僕にはー好きな人がいまーす!』
そう言った途端、校庭に悲鳴にも似た歓声が沸いた。
「だぁーれー?」と男子生徒たちがなんとか主張の手助けをしてくれる。
『2年A組ー!鶴橋架音さん!僕は君が好きでーす!気が強くて友達想いなところに惹かれましたー!僕と付き合ってくださーい!!』
智久が言うと、校庭で主張を聞いていた架音が美乃梨の背後に回って「うそぉ!」と、背中に顔をうずめている。
すると美乃梨が架音を前へと押し出し、「ちゃんと返事してあげないと柴田くんがかわいそうだよ」と言った。
「いや…でも無理、答えられない!」
両手で顔を覆った架音だったが、智久がもう一度『付き合ってもらえませんかぁ?』と訊いたら、「お願いしまーす!!」と、大きな声で気持ちに応えていた。
そこで翔が『青春だぁー』と大きな声を上げ、『おめでとう!』と、智久の肩を叩いた。
女子たちは少しがっかりしたような声を上げていたが、男子たちはなんとなく盛り上がっていた。
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