祭り

4/6
293人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
そんな賑やかだった学校祭が終わり、静まり返った校内を歩いていた美乃梨がなんとなく昼間の出来事を思い出し笑いし教室に入ると、ギターを片付けていた雅広がいた。 「まだいたんだ?」 雅広に訊かれ、「なんか架音が柴田くんと帰っちゃったから…これからはきっとこういう感じなのかなーと思って。で、昼間の柴田くんの熱い告白を思い出して笑ってた」と、美乃梨は答え、学年で2位をとった壁新聞を見てまた笑みを浮かべた。 「若林もそういうの興味あるの?」 雅広が訊く。 「そういうのって?」 美乃梨が訊き返すと、「男女交際」と、返してくる。 「そりゃあ…全くないと言えば嘘になるよ。架音の幸せそうな顔見たら興味も沸くし」 「へえ…じゃあ、俺と付き合ってみる?」 雅広がそれとなく言った。美乃梨は思わす小さく噴き出した。 「もっと熱い告白なら考えたかも」 美乃梨が笑うと、ギターを片付けていた手を止めて雅広が立ち上がった。そして美乃梨に近づき、口唇が触れ合うすれすれのところまで顔を近づけて、「俺の彼女になって」と言った。 驚きで呼吸を忘れた美乃梨は、しばらく目を見開いたまま雅広を見ていた。顔の距離は変わらないまま。美乃梨は思わず、「…はい」と、答えていた。 ふっと笑った雅広の吐息が口唇をかすめて行った。 「一緒に帰ろう。俺ももう終わるから」 離れて行った雅広を見て、美乃梨はバクバクと音を立てる心臓に気付かれないように胸を押さえながら「うん…」と、答え、窓際に寄って両手で顔を覆った。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!