祭り

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――― 智久たちが潜伏先に選んだ廃墟になった旅館には多くのパトカーが停まっていた。草で生い茂った道もなんのその、タイヤで踏みつぶして坂を上がっていく。廃墟の中には鑑識がいて、悪臭にむせ返る部屋の中で写真を撮り、証拠となりそうなものを拾い集めていた。 悪臭の原因はカビや埃なんかじゃない。腐敗臭だ。 傷んだ畳の上には5体の遺体が横たわっていた。 3人は女性、2人は男性だ。身元を表すようなものもなければ、衣服さえ纏っていない。 裸の男女が規則正しく廃墟となった旅館の大部屋の畳の上で、入り口側に頭を向け、横たわっていたのだ。しかも全員、死後一カ月以上経過しており、一度土の中に埋められていた形跡がある。体中に土をまとっているから一瞥しただけでわかるのだ。 年齢も全員バラバラ、外見もあまり共通するものはない。どちらかというと趣味も仕事も全員違うような印象を受ける5人の遺体を見て、野本はため息を吐いた。 「一人は播磨伊織だとしたら…もう一人の殺人鬼は誰なんでしょうか?」 現場で遺体の顔を見下ろしていた本田に訊くと、本田は首を傾げた。 「少なくとも折原彩香に関係した人物だろうな」 「でも、彩香が関係した事件の犯人は播磨伊織以外全員逮捕されています」 「だとしたら、まだ逮捕されてない犯人がいるんだろ。もしくは…折原彩香の近くにいた人物とか…な」 それじゃああまりにも範囲が広すぎる。参考にならない意見に野本はまた眉をひそめた。 「でも、お前が言っていたことは当たったんじゃないか」 本田が突如そう言った。
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