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猫のキティのケーキは、なるほどほとんど炭のような味だった。しかし彼女が一生懸命作ったことは伝わってきたし、入れてくれた紅茶とクッキーは非常に美味しいものだったので問題はない。彼女の店でティータイムをしたら、次は亀のクレイヴとその兄弟達が運営している絵本のお店に向かうことにした。彼らは、絵本を描きたい作家達を複数抱えていて、それを店に並べてひとりでも多くの人に読んでもらおうと宣伝して回っているらしい。
絵本の出来はピンキリだったが、だからこそ面白かった。特に、お星様を金に変えてしまった魔女の女の子のお話がとても面白かったように思う。絵本を描く作家達もお店で売る兄弟も、みんな想像力が豊かで楽しい者達ばかりだった。話し込んでしまったら、すっかり夕方になってしまったほどに。
その後念願のプールに案内してもらい、ふわりと一緒にプールに入って水遊びをした。彼女の水着姿は、猫でも人間でもない僕から見てもドキッとするほど可愛らいいものだった。猫耳ロリは至高、だのなんだのプールサイドで見物していた元人間っぽいペンギンが幸せそうに親指を上げて倒れていたが、あれは一体何であるのだろう。他の水辺の動物達も集まってきて、最後はみんなで水の中で追いかけっこをすることになった。僕は泳ぎなら、そんじょそこらの動物に負けない自信がある。僕は時間いっぱいまで鬼に捕まらず、逃げ切ることに成功したのだった。
――あーすっかり遅くなっちゃった。
僕が住む家は、町の大通りから一本逸れた東の道沿いにある。ふわりが気を使って、なるべく便利な場所に家を構えてくれたのだった。僕はみんなに貰った果物や絵本などのプレゼントをいっぱいに腕に抱えながら、すっかり夕闇に染まった道をてくてくと歩いていく。
街頭が煌々と照らす道は、夜であってもさほど暗くはない。カラフルな風船も、相変わらずふよふよと道に空にと浮かんで漂っている。
「!」
用意された一戸建ての玄関ポーチに近づいた時、僕はドアの前に立っている人物に気づいて目を見開いた。
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